Luz do sol *緑の森

大好評ロングセラーとなった前作に続く デュオ 第2弾
ブラジル音楽の衣をまとって生まれる 日本人の心に響くサウダージ

生きてゆく 愛しさと哀しさ・・・
日本人が心の深いところに抱く心象風景
ふたりの織りなすシンプルな音色によって 紡がれてゆく
いつか聴く人の心のひだに 優しく届き 気持ちをそっと 和らげてゆく

【6th】2013年12月 発売
渋谷毅 平田王子 DUO
soramame record SMME-1307 ¥2,400 (税抜)
販売:キングインターナショナル

購入先


Musicians

渋谷 毅

1939年東京生まれ。東京芸大作曲科中退。
1980年代後半より、渋谷毅オーケストラを中心に活動。『LIVE-1989』『LIVE-91』『酔った猫が低い塀を高い塀と間違えて歩いているの図』『TAMASA』『ホームグランド・アケタ・ライヴ』『ずっと西荻』、オーケストラメンバーとのデュオアルバムなど多数の作品がある。

1960年代後半より、映画・CMの作曲家として数多くの作品を手がける。CM作品では松下電器の『テクニクス』でACC賞グランプリを受賞。映画では『あにいもうと』(今井正監督)『潮騒』(森谷司郎監督)『はだしのゲン』(山田典吾監督)『俺は田舎のプレスリー』(満友敬司監督)等。2007年にはガブリエル・ロベルトと共に音楽を担当した『嫌われ松子の一生』(中島哲也監督)で、第30回日本アカデミー賞・最優秀音楽賞を受賞した。

歌手への作品提供では、由紀さおりの『生きがい』初恋の丘』などのヒット曲があり、NHKの子供番組『おかあさんといっしょ』にも多くの作品を提供、『こんなこいるかな』『ぼくのミックスジュース』『くじらの時計』『ちょんまげマーチ』などが有名。 現在、放映中のNHK-TV『ピタゴラスイッチ・フレーミー』の音楽も渋谷毅の作曲によるもの。

また、浅川マキ、金子マリ、小川美潮などのヴォーカリストからの信頼も厚く、特に浅川マキとは40年近く活動を共にし、レコーディングも多数行っている。

ピアニストとして現在も月に15本以上のライヴ活動を行い、日本ジャズ界の至宝とも呼ばれる。数々のレコード作品のなかでも1999年秋に発表した『エッセンシャル・エリントン』ではジャズ・ディスク大賞・日本ジャズ賞を、 2001年秋に発表した森山威男とのデュオ作品『しーそー』ではジャズ・ディスク大賞・日本ジャズ賞と芸術祭優秀賞を受賞した。

ブログ&スケジュール:http://blog.4carco.net/

渋谷毅さんによるコメント
グッドマンではじめて平田さんと出会って、それからしばらくつき合いはなかったのだけれど、また演奏するようになったその記念すべき場所が なってるハウスでした。
平田さんがアルバムMy Joãoを作ったころだから2007年前後のことだ。
それからふたりで2枚のアルバムを作った。
Luz Do Sol 太陽の光、それからLuz Do Sol 緑の森。
平田さんのオリジナルは魅力があるし、なにげない歌い方もそれがそうでなくてはいけない必然があって、それで音楽のなにかにまた気がつく。

Recording

2013年6月 山中湖

Songs

01. Passarim(パッサリン) Antonio Carlos Jobim
02. Sambou sambou(サンボー・サンボー) João Donato/João Mello
03. Vênus(ヴィーナス : 金星) 平田王子
04. Choro bandido(ショーロ・バンヂード) Edu Lobo/Chico Buarque
05. Gaiolas abertas(開かれた鳥籠) João Donato/Abel Silva
06. Alma gêmea(ソウルメイト) 平田王子/岡田郁香マリア
07. Desjejum(朝食) 渋谷毅/平田王子
08. Caminhos cruzados(十字路) A.C.Jobim & Newton Mendonça
09. Menino-anjinho(天使の坊や) 平田王子/岡田郁香マリア
10. のうさぎルーニー~ほしのうた 渋谷毅/井出隆夫
11. 山形 平田王子
12. 誰そ彼 (たそがれ) 平田王子
13. Ka wailele o Nu’ uanu(ヌウアヌ渓谷の滝) Jay Kauka

制作よもやま話

制作のあれこれ、少し綴ってみようかな~と思います。

制作にあたって

日頃のLIVE活動では昨今、渋谷さんとの演奏が一番多くなって来ました。DUOは少しずつ進化して、深まってゆきます。また、このDUOで録音をしたいな…という思いは、前作が終わって1年くらい経った時にはもうあったかも知れません。

前作は、「せっかく渋谷さんに録音して頂くのだから」と思うと、選ぶもの選ぶものがブラジルの名曲揃いとなりました。それでついオリジナルが置き去りになった、という経緯もあります。そのような前回だったので、今回はオリジナルを中心にしてみようということになりました。

選曲について

オリジナルは最近書きためたものを中心に選曲し、リハーサルやライヴでやってみて、録音したい順をつけて行きました。なので、未収録のものがまだあります。リハーサルやライヴで重ねていくと、曲がだんだんと深まってきて、とてもいいんですね~。

オリジナルの中でも、「Alma gemea」「天使の坊や」「山形」「誰そ彼」「ヴィーナス」はライヴで人気の曲なので、始めから入れる予定でした。「山形」はじつは古い曲で、細かい修正を重ねて重ねてずっと来て、このたびやっと納得! という気持ちになれたので収録してもいいと思えたのです。この中では、自分としては、「ヴィーナス」が一番気に入っています。過去のオリジナル曲「聖橋」「Sem falar」の流れも汲むもので、その時の私の気分にぴったりでした。

渋谷さんの曲、「月のうさぎルーニー~ほしのうた」は、いつも“しぶやさんといっしょ”というライヴでずっと歌わせて頂いている曲です。じつは前回『LUZ DO SOL*太陽の光』のレコーディングの際も録音はしていたのですが、収録しなかったのでした。それを話すと多くの方に温かいお叱りを頂きましたので…、このたびは改めて録音して、収録しました。

「朝食」という由紀さおりさんが歌った曲があって、これを私が改めてポルトガル語で(タイトルは変えずに中味は全く変えてもいいということで)作詞してみる、ということになり、楽しく挑戦しました。朝起きると、一番最初に食べたいもの、私の場合は必ずフルーツです。それは原始時代からの動物としての記憶が体に残っているからに違いありません。ほほ。洞穴で起きて、本日の果実を探しに森に入っていく。小川のほとりの道を抜けて、スペシャルな一個を求めて、鳥が鳴く中、朝日がさす中を、走っていく…。動物の毛皮を着ています。これは想像ではなくて、遠い記憶なんです…。って、私だけの妄想?

1曲目、JOBIMの「パッサリン」については、いつかどうしても取り組みたい曲でした。それにど~~~うしても、この曲はいつか渋谷さんと演奏したかった。

まず、自分では、ジョビンバンドによる原曲は、男性2名+女性5名で歌われているので、音域が広すぎて、一人で歌うには実はすごく違和感があるので、違和感のないkeyと歌い方を見つけなくてはなりませんでした。

この曲は何の録音プランもないうちから渋谷さんにリハーサルを重ねてもらっていました。試行錯誤しながら演奏してみていると、曲想というのか、イメージが湧いてきます。間奏やエンディングなども、うまくいったと思います。これは、私のクラッシックギターの勉強が深まってなければできなかった…と、たまには自分を誉めてやるところなのデス。『LUZ DO SOL*太陽の光』が「サビア」で始まるんだから、今回のアルバムの1曲目は「パッサリン」しかない。この2曲は、自分の中では 一対に思えてしょうがありません。
Choro Bandido も、渋谷さんに弾いて欲しかった曲です。歌ってくださり、嬉しかった。
そのほかの曲は、ライヴの演奏曲から選びました。

レコーディング

レコーディングは2013年6月末に、山中湖で行いました。
これまでと同じく、エンジニアの迎谷さんと、渋谷さんと三人で、ごくシンプルに。
途中からキングインターナショナルの関口さんが参加してくださいました。
行った当日は、今にも降りそうな厚い雲のくもり空。湿度が高くて私はご機嫌です。その夜から雨。うっそうとした森がしっとりと濡れて気持ちが良かった。最終日には晴れもあり(富士山も!)天候的には恵まれました。でも肌寒かったな…。 今回は食事も部屋もお風呂も(! これが大切)快適で素晴らしくて、ありがたかった。

渋谷さんと私とはブースに分かれて一緒に演奏し、それを録音する というやり方です。

気分が向いた曲から、ランダムに演奏してゆきました。
Take1で終わったのは、確か「Caminhos cruzados 」でしたか。
納得がいくまで粘って演奏したのは「誰そ彼」でした。
あとは大して変りなかったような気がします。楽しく演奏できました~♪
「Choro Bandido」では、渋谷さんは弾き語りにも挑戦!

収録曲以外にも録音したのは、Esperança perdida (A.C.JOBIM)。
それから、Caminhos cruzados (A.C.JOBIM) は、完全にインストVer.(つまり歌なし)も録音してみました。これらも捨てがたく良かったのですが、いずれも録音後の選曲の段階で落ちました。
【使用楽器】ピアノ:YAMAHA C5 / ギター:クラシックギター 奥 清秀

ミックスダウン

「太陽の光」と同じ方針でやろうかと思って始めたのですが、「緑の森」では結局リバーヴを前作に比べてずっと減らすことにしました。特に、「Venus(ヴィーナス)」では、“毛布にくるまって”という歌詞のごとく暖炉の横で聞いているような室内の感じを出したくて歌のリバーヴを限りなくゼロにしています。どうかな…?
ギターについては、前作より奏法が少し繊細になったため前作よりははっきり聴こえるように工夫してみました。

CDタイトルについて

もちろん、いつものように、“やりたい曲をどんどんやってみて”、“録音してみて”、“選曲して” から、アルバムタイトルは最後についたのです。案は、いろいろ出ました。曲の内容が原生林や森の中の曲ばっかりだ…ということに気づいてから、「森」とか「プラネット」とかいうタイトルが候補に上がってきました。
(ずっと前、2枚目のCD『オルフェのサンバ』も、夜の曲ばっかり…、ということがありました。この時「夜」というタイトルは付けられなかった。私としてはアルバムの中味とあの明るいジャケットのギャップに違和感が残った、という思いもありました)

結局、「LUZ DO SOL(ルース・ド・ソル)という音が好きだから」 と仰る渋谷さんのご意見により、これは残すことに。後ろ半分は、シンプルに考えて “緑の森” としました。「LUZ DO SOL(ルース・ド・ソル)」を残したことで、ちょっと、シリーズものの雰囲気が出てきました。

ジャケット、写真、ブックレット

写真は2ndCDからずっと私を撮ってくれている山田素子さんに、今回も頼みました。彼女自身もウクレレ弾きヴォーカルです。彼女には音楽と写真の関係について何かお考えがあるらしい。そのせいかナ、私は彼女の写真がとても好きです。

デザインは今回も、前作・前々作に続いて、さとうかずみさんによるもの。彼女のセンスにはいつも脱帽です。お茶を飲み、ミーティングしながら、ゆっくり決めて行くのはとても楽しい作業で、つい長くなっちゃう。

今回は、オリジナル曲が多かったせいで、訳を見やすいレイアウトで載せたり曲解説を書いたりしたため、ブックレットがちょっと説明過多気味となりました。そのぶん、写真が減っちゃった。(このバランスはいつも迷うところなんです。)

ジャケット写真は、ちょっと不思議な構図ですが、ピアノ向こう側にちょうど台があったので、そこに何か弾みでぴょん、と乗ってギターを構えて見たのです。なんとなく演奏が始まって…曲はたしか、Pra machucar meu coração(Ary Barroso):プラ・マシュカール・メウ・コラサォン(アリ・バホーゾ)だったかな。その時のもので、2人の音が聴こえてきそうな写真を撮ってもらいました。

販売スタート

渋谷TOWER RECORD さん、新宿TOWER RECORD さんでは、大きく取り上げて頂いていました!
試聴機にも入れて頂いています(私が訪れた時はDISC”1″でした。感激!! ちなみに試聴機に入るって、大変なことなんですヨ)。

コーナーは、日本JAZZ のところです。ミュージシャン本人によるコメントを店頭に書いてください、と頼まれて、悩みましたが、何とか書きました。CDは渋谷毅さんのコーナーに置いてあるかも知れません。売り場の関係でブラジルの方には出ていないかも知れません…(この問題、いつか解決したいなぁ!)

それから雑誌『CDジャーナル』では、前回もライナーを書いてくださった青木和富氏が、素晴らしい内容のコメントを 「今月の推薦盤」の欄に書いてくださっています。
写真はパネルまで作ってくださった渋谷TOWERさん コーナーの前で