2012年12月8日(土)

「アニマルプラネット」というCATVチャンネルは、動物好きにはとてもありがたい。なかでも、『ミーアキャットの世界』という番組が最近は気に入っている。
この番組がすごいのは、いくつかの群れのミーアキャット(のうちの、たぶん相当な数)を個体識別して、彼らに名前をつけ、発信器もつけて、その社会に展開されている事実を把握し、ナレーションをつけたときには視聴者には完全に物語になって理解されることだ。当然ながらミーアキャットは演技できない。本当に起こったのだ、、、と驚く。
                                   
ミーアキャットの世界は人間社会にもよく似て、そこでは戦国時代のような物語がいまも展開されていることがよくわかる。

チームの団結、狩り、子守、そうじ、グルーミング、病気、病人の付き添い、死を迎える様子、出産、事故といった、よく動物番組で描かれているような日常のことから、同じ群れの中での勢力争いやそのために起こる子殺しの様子、クーデター、他の群れのオスとの不倫や、誰が誰の子を宿しているかまで把握されているし、他の群れとの領地獲得争いの様子、リーダーシップの実力まで描写されている。
群れを離れて行動する(なんてことがそもそも・・・あるんだ!? )女たらしの個体まで登場する。(愛すべきこの風来坊にかかるとなぜか多くのメスがメロメロにされてしまう。大胆不敵なヤツで、つい人間社会のだれかを思い出してしまう。)

こんなことが番組に・・・どうしてできたのだろう??
これは、私が たとえカラハリ砂漠に行って 運よくミーアキャットを数日見られたとしても、ぜったいにわからない。「なぜ彼らが今、こういう行動に出たのか」などは、専門家でないとまず説明できないからだ。

カメラや研究技術の発展がもたらした結果なのか・・・ずっと同じ個体を追えること、いくつかの群れに平行して起こる物語をまとめる編集力・構成力、そして間違いなくスタッフの熱意と根気から、ストーリーを断片的にではなくめんめんと繋げていることが、この番組の特徴だ。
私はこんなふうな動物番組は、これまで知らなかった。
個体が小さいのだから物語の展開も早いのに、よくここまで追えたものだ・・・と、制作スタッフのご尽力に心から感嘆しております。

ミーアキャットの社会は、人間の社会とよく似ている…。
でも、音楽がない。
料理や、絵画や彫刻、ダンスがない。

ミーアキャットには音楽がない。

カタハリ砂漠の風の音を聴くだろうか・・・
なかなかやって来ない、雨の音を ?
長い夜を仲間とともに過す 巣穴のなかでは ?
美しい夕焼けを、グルーミングしながら仲間と分かち合っているとき
きちんと起立して みんなで真新しい朝日を浴びる日光浴の時間
彼らは何を聴くのだろう。

ほんとうに、音楽のない人生を、生きているのだろうか。